ゲラン(Guerlain)のアクア アレゴリアシリーズから『ローザ ヴェルデ(Rosa Verde)』をレビューします。
もうこれは「キンと冷えたキュウリ」ですね。肌にのせた瞬間、瑞々しい瓜の香りが勢いよく立ち上ります。まるで夏の朝、冷蔵庫から取り出したばかりのキュウリをスライスした瞬間の空気。
瓜系やグリーン系の香りが好きな方には刺さる仕上がりです。逆に瓜系無理って人は避けて良いんじゃないでしょうか。
トップでは強めのミントが清涼感を加え、青々しいバイオレットリーフと重なります。バイオレットリーフは、スミレの葉から得られる香料で、青くやや土っぽい印象を持つ素材で、キュウリとかグリーンの補強によく使われますよね。
キュウリの持つ強いアクアティック感が出ていてみずみずしい。香り全体に透明感と冷たさを与える設計になっています。昔オゾン系で広く活躍したキャロン(Calone)とかカリプソン(Calypsone)辺りが使われているのかもしれません。海辺やスイカのような水っぽい印象を持ち、現代のフレグランスによく用いられる香料ですね。
ミドルでは、和梨とローズが現れます。梨の持つみずみずしい果実感が、瓜の青さをやわらげてくれる設計です。ローズはごく控えめで、薔薇を主役にした香水ではないことがすぐに伝わります。
むしろ、緑の香りを支えるための名脇役。強いグリーンは時に青臭さや生臭さへ転びやすいため、甘さでそのリスクを抑えたバランス感。
しかしラストにかけて、やや粉っぽくメタリックな印象が出る場面がちょっとある。最後は乾ききったグリーンと苔のニュアンスが、肌の上に静かに残ります。これはクラシカルなシプレー調の処理によるものでしょうか。シプレーとは、ベルガモットやオークモスなどを基調にしたクラシカルで重厚な香調だと思って貰えれば。最近のシプレはまたちょっと違いますが。
香りの持続時間や拡散力は控えめです。特に75mLで税込15,400円という価格を考えると、物足りなさを覚える人もいるかも。
この香りのコンセプトは水辺の緑という情景。境界や移行を意味するリムナリズムを思わせます。陸でも水でもない狭間の世界観ですね。その世界観を支えるのが、あえてローズを主役に据えない曖昧な設計。トップからミドルへの流れも美しい。
惜しいのは、ラストの持続性とメタリックな印象。時間が経つほど瓜の透明感が抜け、やや単調になる点。冷たい金属のような印象が少しだけ残ります。
夏向けですし、寒い日に肌乗せしたのに心が真夏に飛んでいってしまったので、これは絶対夏に浴びたい。直球なキュウリ系ってほんとになくて、キリアンのKilianの『ローゼズ オン アイス(Roses on Ice)』もどちらかと言えばローズに寄ってるんですよね。肌乗せして買いたくなったのは久々かも。でももう一回肌乗せして考えたい。悩むところ。
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